日本認知症ケア学会・読売認知症ケア賞「功労賞」受賞

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第8回 日本認知症ケア学会・読売認知症ケア賞「功労賞」受賞

認知症の介護や医療に功績のあった人や団体に贈られる「日本認知症ケア学会・読売認知症ケア賞」(日本認知症ケア学会主催、読売新聞社特別後援)の第8回受賞者が決まり、浜松市のアクトシティ浜松で授賞式が行われた。昨年は東日本大震災の影響で中止されたが、長年の取り組みをたたえる功労賞に1人、奨励賞に1人、1団体が選ばれたほか、被災地で認知症高齢者の支援活動に取り組む1団体が特別賞を受けた。

地域に根ざす懸命な活動(講評 本間昭・選考委員長)

功労賞の佐々木氏は、医師として、そして人間として常に試行錯誤しながら、より良い認知症ケアを目指してきた。その取り組みは、日本の高齢者福祉の歴史そのものと言える。
 奨励賞の雨宮氏と「認知症の人と共にくらす会“きくち”」は、認知症の人たちが安心して暮らせる地域づくりに尽力してきた。雨宮氏は実践的な介護とケア人材の育成、「きくち」の皆さんは、医療、看護、介護の垣根を越えた連携が評価された。
 特別賞の「南三陸町被災者生活支援センター」は、震災後の混乱の中、介護経験者の確保や派遣、相談場所の設置などの支援体制を迅速に構築し、被災時の認知症ケアのあり方を示した。
 8回目を迎えた今年も、地域に根ざして一生懸命活動している人や団体を顕彰することができた。本賞の意義を社会に示せたと確信している。

 

功労賞 「良いケアこそ必要」示す

きのこエスポアール病院院長
佐々木 健 さん(64)

「私に功績があるとすれば、よいケアこそが、認知症の人に最も必要なものと示してきたこと」と、晴れやかな笑顔で話す。
 

1984年、岡山県笠岡市に日本で初めての認知症専門病院を開設。「認知症の人は、閉じ込められたり、薬でおとなしくさせられていた時代。この状況をなんとか変えたかった」と、当時の思いを語る。
 当初は、行動の自由を制限すれば症状を悪化させると考え、認知症の人を自由に行動させた。徘徊(はいかい)する人が歩き続けられるよう、病棟を回廊式にした。廊下の突き当たりで排尿する人が多かったため、その場所にトイレを作ったこともあった。「徘徊には、『家に帰りたい』など、目的があった。どこにも行けない回廊は残酷だ。トイレは、近くにあれば混乱しないのだから、病室の中に作ればいい。間違いだらけのケアを一生懸命やっていた」と、振り返る。

 95年にスウェーデンを訪れ、先進的な認知症ケアに触れたことが転機になった。「病院や施設に徘徊する人がいない。どうやっているのか聞くと、『一緒に散歩したり、座ってコーヒーを飲んだりすればいい』と言われ、今までの見方が間違っていたことに気づいた」

 スウェーデンの認知症協会との交流を通じて、集団的なケアから、一人ひとりに向き合う個別ケアへと方向転換した。病棟には、患者が集まれるリビングルームをいくつも作り、10人ほどに分かれて、家庭的な生活が送れるようにした。
 運営する老人保健施設や特別養護老人ホームにも、同様の個別ケアを取り入れている。2001年には、介護が難しいとされている前頭側頭型認知症専用のグループホームを日本で初めて開設した。
 試行錯誤で得た知見で、日本の認知症ケアをリードしてきた。「よいケアがなくては、医療も力を発揮できない。ケアに携わる人々に、自分たちの仕事に誇りを持ってもらえるよう、エールを送り続けたい」